ただ一つの籠のために

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梅の花が咲き誇る中,広島県立美術館まで日本伝統工芸展を見に行った。

これだけは…何があっても毎年行ってて。
今年はずっと応援していた作家さんが人間国宝に指定されて,ちょっと別格の場所で展示されていて,わぁ…って。すごく嬉しかった。



そこから少し離れた一番奥のブースに,一つの竹籠が展示されていた。


小さいけれど,凛とした佇まいの四角い,丸みを帯びた籠。

その横に黒いリボン。



重要無形文化財の保持者であり,木竹工部門の選定者でもありながら,ここ数年はずっと展示も選考もされていなかったので,いつかこの日が来るだろうと覚悟はしていたけれど…やっぱりショックだった。


かなり…昔。
まだ私が網代編みも編んでなかった頃。

自信満々で作って出す割には,全然自分のデザインが採用されなくて。
「なんでだー」って不満に思いながらいじけていた。

そんなとき,テレビで「人間国宝シリーズ」っていうのをやっていて。

その方の作品の,あまりの美しさに衝撃を受けた。
凛とした気品。作品から滲む気高さ。厳しさ。誇り。

なんかね,自分のやってるものとは異空間ですか?っていうくらいレベルが違うの。
思わず笑っちゃった。
毎日ブログのアクセス数やら,どこかの書籍に掲載されることばかり考えてた自分があまりにも馬鹿みたいに思えて。

目の前の作品に,自分はどれだけ真剣に向き合ってるのか?
自分が納得する作品を作るために,自分は日々どれだけ努力してるのか?
自分はその籠に対して…自分の人生を賭けているのか?

ほんとにただひとつの花籠に…自分の人生を賭けている人の作品って,こういうものなんだな…って。


多分

あの方がいなかったら 私の人生は違ったものになっていたと思う。


ただひとつの花籠でも,自分の人生のすべてを込めて作った人の作品っていうのは
他の人間の人生までも変える力を持つのだと思う。




数年前,自分の作品集を出版して,自分の手元に届いたとき

この作品集をその方に送ろうかな?ってかなり悩んだ。
「同じ時代を生きてくださってありがとうございます」って。
一言でいいからお礼が言いたかった。

結局…出さなかったけどね(笑)。
やっぱりまだまだ自分の作品は拙くて。お見せするのが恥ずかしかったから。

今となってはそれがよかったのか悪かったのかわからない。
もう二度とその方にこの世でお礼をいう事はできなくなったのは事実。





もうしばらくこの方の作品を間近で拝見することはないかもしれないな,って思いながら。
氏の遺作の前で黙祷した。

でもねあの方の生き方や作品に対する想いは
一生忘れたくないな,って思う。
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by satoka07 | 2013-03-09 10:50

手芸用の紙バンドで日々作っています


by さとか