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~手わざを支える人ともの~

ここ最近,市立図書館を利用するのが家族のマイブームになっている。
しょぼい町内の蔵書と違って,さすが政令指定都市が所有しているだけあって,その数はかなり膨大だ。しかも最近はインターネットで簡単に検索できるし。

ということで,何気に借りてきた「工芸の博物誌~手わざを支える人ともの~」(淡交社)日本工芸会近畿支部編 定価2095円(税別)は面白かった。
この本では伝統工芸を支えるもの(柿渋,ふのり,うばい,天蚕(てんさん),胡粉など)を作り出す人たちと,それが作り出される工程が紹介されている。

烏梅(うばい),朱(しゅ),青花(あおばな),研炭(とぎすみ)…など,聞いたこともないような材料が目白押しで,こういうものを使いながら伝統工芸というのが制作されるのか…と知るのはとても勉強になった。
たとえば着物はたくさんの職人さんが,気の遠くなるような工程を経て作り出される…というのは漠然と知っていたけれど,具体的にその着物の下絵を何を使って描くのか…なんて想像すらしたことがなかった。が。
着物の下絵を描く絵の具には,「青花紙」というものを使うらしい(もちろん,すべての着物がそれを使用しているわけでないです)。黒に近い紺の和紙で,その紙を絵皿に一枚とって水を注ぐと青花液が得られる。それに筆をつけて書くらしい。
水に簡単に溶解するのが特徴で,着物の絵柄を書き終わった後は「青花ちらし」といって,その青い絵の具を水で洗い落とす。
この本ではその「青花紙」を作っている職人さんが紹介されていて,花の摘み取りから花汁をしぼり,和紙に塗り,乾燥させる工程まで紹介されている。花は毎日咲くので毎日摘み取りしなくてはならず,何度もやめていと思うので「地獄花」とか「苦労花」とか呼ばれるらしい。摘み取った後も休むことなく花の汁を絞り,濃縮させる。濃縮させたものを和紙に塗ってゆくのだけれど,その塗りと乾燥だけでも70~80回も繰り返される…。

なんか,それだけでも気の遠くなるような手間と時間なのだけど,この本まるごと一冊がそんな気の遠くなるような工程と手間をかけた,職人の世界です。
「手作りをする…ものをつくる…」という奥深さをしみじみ感じることのできる一冊なので,興味のある方はぜひ。
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by satoka07 | 2005-09-28 14:09 | Comments(0)

手芸用の紙バンドで日々作っています


by さとか